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つばくろ(つばくろ)
燕(つばくろ)
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1960(昭和35)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,395 字 · 52 页
と渡貫は云った、「みんなもう半分は棺桶へはいったも同然だ、ばかばかしい、帰ろう」
「うん帰ろう」と相川が云った、「今夜の泰正寺の集まりでは穏やかに頼むよ」
「そんなことは問題じゃないだろう」と歩きだしながら渡貫が云った、「穏やかにやろうと荒っぽくやろうと、大事を計るのに方法を選んでなんかいられるか」
「そう云うな」といっしょに歩み去りながら相川が云った、「渡貫はこらえ性がないので困る、大事を計るのは辛抱が肝心だ、そうあせっては事をこわしてしまうぞ」
かれらは話しながら去っていった。そうして、かれらの話し声が聞えなくなるとまもなく、湖に面した松林をぬけて、佐藤正之助と畑中早苗があらわれた。
「悪い方よ、あなたは」と早苗が囁き声で云った、「あんなことになっても平気な顔をしていらっしゃるんですもの、わたくし呆れてしまいましたわ」
「じゃあどうすればよかった」と正之助が云った、「おろおろして、地面に手を突いてあやまりでもすればいいのか」
「そんなことなすってはいや」
「誰も見ていやあしないよ」
「いけない方ね」と早苗があまえた声で云った、「だめですったら、だめ、いけません」