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ばくやくのはなかご
爆薬の花籠
海野 十三
「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页
なぜ、ミマツ曲馬団は、こういうあやしい者にねらわれているのであろうか。団長と房枝が、おののいているうちに、その幕のむこうでは、一匹の大きな蜘蛛が、糸をたぐって、するすると、天井の方へのぼりつつあった。そのほか、誰もそこには立っていなかったのである。大きな蜘蛛が、幕ごしにものをいったとしか思われないのであった。
蜘蛛が、ものをいうことなんて、あるであろうか。
ほんとうの蜘味なら、そんなことはできない。しかし、もしもその蜘蛛が、作り物の蜘蛛であって、その蜘蛛の中に、小さな高声器と、そして小さなマイクとが入っていたとすると、本人は遠くにいながら、その蜘蛛のいる附近の話ごえを、盗みぎきすることもできるであろうし、また、遠くから、その蜘蛛の体の中にある高声器を通じて、こえを送ることもできるであろう。
だから、団長と房枝のそばに下っていた幕のうしろに下っていた蜘蛛は、そのようなたくみなぬすみ聞きをする高声装置ではなかったか。そして、天井から下っている蜘蛛の糸とみたのは、高声電流を通ずる電線ではなかったか。だから、蜘蛛そのものは、死んだ機械器具であって、このようなすぐれた装置をつかっている人間こそ、あやしい人物であった。