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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

えっ、それはそうよ。ふふふふ。とにかく、おいでをお待ちしていますわ」

房枝は、巡業先がメキシコであったので、英語は少しわかっていた。だから、ニーナの電話も、だいたい了解した。ドクトル・ワイコフがすぐ診察にきてくれることがわかった。だが(ええ、それはそうよ、ふふふふ)とは何のことであろうか。ちょっと気になる語であった。

(ゆだんはならない!)

房枝はそう思った。

ドクトル・ワイコフが現れたのは、それからものの十分とたたない後のことだった。長身のひじょうに貴族的な顔をもった医師だった。

彼は、長椅子の上に寝ている黒川のそばに、自分のもってきたカバンを開き、診察にとりかかった。

「うん、ちょっと重傷だが、今手当をして、しばらく安静にさせとけばいいでしょう。お湯がわいているでしょうね。早くもってきてください。ちょっと手当をしておきますから」

房枝は、黒川の後頭部の傷を見ていると、なんだか気が遠くなりかけた。こんなことではいけないと思い、なんとかして、黒川の手当の終るまで、がんばろうと、自分の気をはげましたのであった。手当はなかなかすまなかった。ニーナは、房枝のそばへきて、彼女を横から抱えながら、大丈夫よ、大丈夫よと、しきりになぐさめた。