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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

「つまり、まさか、トラ十は、だれかに殺されたんじゃないでしょうか。そして、殺した犯人は、暗闇を幸い、死体をひっかついで、海の中へ放りこむなんか、したんじゃありませんかね」

「ほう、探偵小説には、よく、そんな筋のものがありますがねえ」

と、事務長は、まじめくさって、そんなことをいった後で、

「まさか、ねえ」と、反対の意をあらわして、黒川の顔を見たのだった。

「でも」と、黒川は、なおも疑いの色を眉のあいだにうかべ、「それから、もう一つへんなことがあるんですぜ、さっき、トラ十の前にあった美しいりっぱな花籠が、どこへいったか、一しょに、卓子のうえから見えなくなった!」

ほうと、おどろきのこえがまわりの人々の口から出た。黒川の指さした消えた花籠のことを、彼らも思いだしたからであろう。

房枝も、もちろん、人垣の間から、一生けんめいに、黒川たちの話に、きき耳を立てていた。

「なんだ、ばかばかしい」と事務長は、笑いだした。

「じゃあ、その丁野十助さんが、花籠を抱えて、どっかへ出かけたんじゃありませんかね。たとえば、水をさすためだとか、あるいは、どこかへ持っていって、飾るために」