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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

「ああ、房枝さん。あなた、おつかれでしょうねえ」

ニーナ嬢が、いつの間にか階段を下りて、房枝の横に立っていた。房枝は、外に見えるうつくしい花壇にながめ入っていたので、ニーナの近づいたのを知らなかった。

房枝は、しみじみと礼をいった。黒川は、熱は高いが、幸いにも今ぐっすりと、ねこんでいるのだった。

「ああ、そう」

と、ニーナはうなずいて、

「じゃあ、あの花壇のあるところへいってみません? いろいろとうつくしい花や、香のいい花が、たくさんあるのです。あなた、花おきらいですか」

「いいえ、花はだいすきですの」

「ああそう。では、これからいって、あなたの好きな花を剪ってあげましょう。あなた、どんな花、好みますか」

「さあ、好きな花は、たくさんございますわ」

房枝は、黒川がよくねむっているのに安心して、ニーナ嬢とつれだち、花壇へ下りた。全くすばらしい花園だ。小学校の運動場ほどの大きさのなだらかな斜面が、芝生と花でうずめられているのだった。朝陽をあびて花は赤、青、黄、紫の色とりどりのうつくしさで、いたいほど目にしみた。そしてえもいわれぬ香が、そこら中にただよい、まるで天国へ来たような気がするのであった。