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ばくやくのはなかご
爆薬の花籠
海野 十三
「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页
「まあ、うつくしい」
房枝は、徹夜の看護に充血した目を、まぶしそうにしばたたきながらいった。
「ここにある花の種類は、七百種ぐらいあります」
「え、七百種。ずいぶん、種類が多いのですわねえ」
「その中に、メキシコにあって、日本にない花が、三百種ぐらいもまじっています。なかなか苦心して持ってきました」
「そういえば、あたくしがメキシコでお馴染になった花、名前はなんというのかしりませんけれど、その花があそこに咲いていますわ」
「じゃあ、あれをさしあげましょう」
「いいえ、花はあのままにしておいた方がいいんですの。きっていただかない方がいいわ」
と、房枝は、上気した頬を左右にふって、辞退した。
「えんりょなさらないでよ」
「いいえ、その方がいいのです」
と、房枝はニーナの好意を謝したが、そのとき気がついて、
「あーら、このいい香は、なんでしょ。あら、バラの匂だわ。まあ、これは大したバラ畠ですわね」
房枝は、とつぜん目の前にひらけた一面のバラの園に、気をうばわれた。
ところがニーナは、そのすばらしいバラの園を、なぜか自慢しなかった。そして、房枝の腕をとると、前へ押しやるようにして、そのところを通りぬけた。