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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

そして信号をしようと、手にもちなおしたとき、彼は、

「あッ!」

と、叫んだ。それは、懐中電灯をもった彼の手を、上の方から何者かが、ぐっとつかんだからである。

「あッ、何者だ。なにをする。手をはなせ」

と、師父は、英語で叫んだ。そのとき師父は、マストのうえから、下をむいて笑っている怪しい東洋人の顔を眺めて見た。それはトラ十だった。

「あははは。ターネフ極東首領こんなところで、怪しげなる信号をしては困りますねえ」

と、トラ十は、流暢な英語で、やりかえして、歯をむきだしてげらげらと笑った。

ターネフ首領!

師父は、ぎょっとしたようすだ。

「なにをいう。首領だなどと、でたらめをいうな。わしは神に仕える身だ」

「神につかえる身だって。へへん、笑わせやがる。神につかえる身でいながら、さっきはなんだって、おれを爆死させようとしたのかい」

「なにをいいますか。あなたは気が変になっている」

「気が変なのはお前たちの方だ。知っているぞ。花籠の中に、おそろしい爆薬をしかけて、おれの前へおいたじゃないか。あの停電のときだよ。ぷーんと、いい匂いのするやつがおれの前へ持って来やがったから、多分それは若い女にちがいない。