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ばくやくのはなかご
爆薬の花籠
海野 十三
「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页
房枝はさっきの自動車にこりて、こんどは道の真中の水たまりよりも、はるかに後に、はなれていた。そして、ふと、さっきの水たまりのところに目をやった房枝は、はっと息をのんだ。
「ああ、たいへんだわ、あの方」
ちょうど、その水たまりのそばを、小さな風呂敷包をもった上品な中年の婦人が、なんにも知らないで、こっちへ向いて通りかかっているのだった。
「ああ、あぶない、たいへんですから、わきへおよりなさーい」
そのままいれば、婦人の晴着は、三輪車のため、ざぶり泥水をかけられ、めちゃくちゃになってしまう。房枝は、自分の身を忘れ、大ごえをあげて、危険せまる婦人の方へかけていった。
だが、ざんねんながら、もうそれは間にあわなかった。
「ああッ!」と、房枝は、両手で目をおおった。
知らぬめぐりあい
房枝が目を閉じている間に、三輪車は、どさりと大きな音をたてると、房枝の横を通りぬけた。
「あらッ」
房枝が、はっと思って、ふたたび目を開いてみると、さあ、たいへんなことになっていた。彼女が、心配したとおり、通りがかった例の上品な中年の婦人は、黒い紋附を、左の肩から裾へかけて、見るも無残に、泥水を一ぱいひっかけられているではないか。