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はちゅうかんじけん
爬虫館事件
海野 十三
「新青年」1932(昭和7)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,914 字 · 38 页
園内も調べていただきましたが判りません。警察の方へも捜索方をお願いいたしましたが、『別に死ぬ動機も無いようだから今夜あたり帰って来られますよ』と云って下さいました。しかし私共は、なんだか其の儘では、じっと待っていられないほど不安なのでございます。万一父が危害を加えられてでもいるようですと、一刻も早く見付けて助け出したいのでございます。それで母と相談をして、お力を拝借に上ったわけなのでございます。どう思召しましょうか、父の生死のほどは」
トシ子嬢は語り終ると、ほんのり紅潮した顔をあげて、帆村の判定を待った。
「さあ――」と帆村は癖で右手で長くもない顎の先をつまんだ。「どうもそれだけでは、河内園長の生死について判断はいたしかねますが、お望みとあらば、もう少し貴女様からも伺い、その上で他の方面も調べて見たいと思います」
「お引受け下すって、どうも有難とう存じます」トシ子嬢はホッと溜息をついた。「何なりとお尋ねくださいまし」
「動物園では大いに騒いで探したようですか」
「それはもう丁寧に探して下すったそうでございます。今朝、園にゆきまして、副園長の西郷さんにお目に懸りましたときのお話でも、念のためと云うので行方不明になった三十日の閉門後、手分けして園内を一通り調べて下すったそうです。