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はちゅうかんじけん
爬虫館事件
海野 十三
「新青年」1932(昭和7)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,914 字 · 38 页
ところが両人が園長を見掛けたという時刻が、殆んど同じことで、いずれも十一時二十分頃だというのです。どっちも、園長は入って来られて二三分、注意を与えて行かれたそうですが、其の儘出てゆかれたそうです」
「その爬虫館と小禽暖室との距離は?」
「あとで御案内いたしますが、二十間ほど距った隣り同士です。もっとも其の間に挟ってずっと奥に引込んだところに、調餌室という建物がありますが、これは動物に与える食物を調理したり蔵って置いたりするところなんです。鳥渡図面を描いてみますと、こんな工合です」
そういって西郷理学士は、鉛筆をとりあげると、爬虫館附近の見取図を描いてみせた。
「この二十間の空地には何もありませんか」
「いえ、桐の木が十二本ほど植っています」
「その調理室へ園長は顔を出されなかったんでしょうか」
「今朝の調べのときには、園長は入って来られなかったと云っていました」
「それは誰方が云ったんです」
「畜養員の北外星吉という主任です」
「園長がいよいよ行方不明と判った前後のことを話していただけませんか」
「よろしゅうございます。閉園近い時刻になっても園長は帰って来られません。