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ろうごくのはんにち

牢獄の半日

葉山 嘉樹

「文芸戦線 第一巻五号」1924(大正13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,671 字 · 16 页

青空文庫

検事が保釈をとり消す、と言ってると、弁護士から聞かされた時だ。

――俺はとんでもねえことをやったわい。と私は後悔したもんだ。私にとっては、スパイを蹴飛ばしたのは悪くはないんだが、監獄にまたぞろ一月を経たぬ中、放り込まれることが善くないんだ。

いいと思うことでも、余り生一本にやるのは考えものだ。損得を考えられなくなるまで追いつめられた奴の中で、性分を持った奴がやるだけのもんだ。

監獄に放り込まれる。この事自体からして、余り褒めた気持のいい話じゃない。そこへ持って来て、子供二人と老母と嬶とこれだけの人間が、私を、この私を一本の杖にして縋ってるんです。

手負い猪です。

医者が手当をしてくれると、私は面接所に行った。わざと、下駄を叩きへ打っけるんだ。共犯は喜ぶ。私も嬉しい。

――しっかりやろうぜ。

――痛快だね。

なんて言って眼と顔を見合せます。相手は眼より外のところは見えません。眼も一つだけです。

命がけの時に、痛快だなんてのは、まったく沙汰の限りです。常識を外れちゃいけない。ところが、

――理屈はそれでもいいかしれないが、監獄じゃ理屈は通らないぜ。オイ、――なんです。