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ものすごきひとくいばなのかい

物凄き人喰い花の怪

国枝 史郎

「現代」1923(大正12)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,756 字 · 12 页

青空文庫

それに答える博士の言葉は大変冷静で素気なくて、書斎の外に立聞きしていた老僕の耳には聞えなかった。老僕の耳へ聞えるのは益々猛けり立つバルビューの声だけで、やがて其声は呪詛となり又猛しい怒罵ともなった。

其時初めて博士の声がハッキリ老僕へ聞えて来た。

「黙れ! 青二才め! 黙りおろう! いつ迄もツベコベ吐かすなら貴様も生地獄へ墜落して○○の餌食にして了うぞ!」

博士の声が消えた後は書斎の中は寂然となって呟き一つ聞えなくなった。やがて老僕は跫音を忍んで書斎の前を立ち去ったが其晩を限りにバルビューの姿は永久世間から失われた。そして間も無くマドリッド市中へそのバルビューの亡霊が夜な夜なあらわれて出るようになった。その亡霊は首を垂れ指で地面を指差していかにも悲しそうな表情をして市中を彷徨い歩くのであった。

斯うなっては寛大の警視庁も打ち捨てて置くことは出来なかった。コックニー博士の召喚が部内の人々に依って議せられた。しかし折角のその相談も実行の運びに到らないうちに当の肝腎のコックニー博士の行方が果然不明になった。

そして夫れから三月経った今日心霊学者のフィリッポ博士が此地に訪問れて来たのであった。