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ぶつりがくじっけんのきょうじゅについて
物理学実験の教授について
寺田 寅彦
「理学界 第十五巻第十二号」1918(大正7)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,765 字 · 10 页
「AがあればBが生ずる」というような簡単な言葉で云い表わしてある方則には、通例「ただAだけがあってその他の因子A'の図A''の図……等がないならば」という意味を含めてある。例えば「落体がある場所で九・八メートル/秒秒の加速度をもって垂直に落下する」というのでも、実は地球の重力のみ働き空気の抵抗や電気磁気などの作用がないとした場合の事である。しかるに実際物体を落す場合に完全な真空で完全に他の力を除外して実験する事はなかなか面倒である。実際重力加速度gを定めるにはこのような直接の方法によらず、却って間接に振子の週期と長さから定め、空気の抵抗の影響は必要に応じて理論から計算した補正で除去する事が出来るのである。天体の影響などは云うに足らぬし、普通の場合ならば電気や磁気の影響は小さいであろうが、しかしもし不注意にも鉄の振子を強い磁石の傍で振らせたり、あるいは軽い振子の場合に箱のガラスが荷電していたりしては決して正しい結果は得られるはずはない。箱の中でなく風のある部屋でむき出しの振子を振らせても同様である。それで一つの方則を実験しようというならば、その実験を支配し得る種々の原因要素を分解して、その内から特にその方則に指定した要素のみを抽出し、他のものを除くようにしなければ予定の結果を得る事は出来ない。