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カラスキーしのゆうじょう
犂氏の友情
久生 十蘭
「オール讀物」1939(昭和14)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,312 字 · 27 页
初めっから藁に小麦粉を混ぜるんですから、藁だけ除けると後に小麦粉が残るのは当り前。小麦粉が出て来なかったら、それこそ不思議なくらいです。……ところが、先生は、そんなことはごぞんじない。これは世界的な大発明だというので大乗気になっているんです」
先生は、そんなことは指の先ほども漏らさなかった。気がよくて、お喋舌りで、ちょっと法螺も吹く石亭先生が、ピリッともそれに触れなかったというのは、それだけでも、先生が「藁麺麭」にどれほどの熱情を持っているか充分に察しられる。先生は発明が他に漏れるのを惧れ、ムズムズする口の蓋をガッチリ閉めて、牡蠣のように頑固に押し黙っていられたのである。
カラスキーは、依然たる沈鬱な口調で、
「この『洪牙利亜兵』で、先生が、どんなことになりかかっているか、これでだいたいおわかりになったことでしょうが、その他に、まだいけないことがあるんです」
さすがに、少々空恐ろしくなってきて、うろたえた声でたずねた。
「お次は、いったい、何です」
カラスキーは顔を深くうつむけて、囁くような声でいった。
「ポリーチカ!」
「ポリーチカって、何のことですか」