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カラスキーしのゆうじょう
犂氏の友情
久生 十蘭
「オール讀物」1939(昭和14)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,312 字 · 27 页
……それに、それとなく、油を掛けたようなところもあったようで……」
「あなたともあろう方が、盗っとを煽てるなどというのは、よくないですな」
「たしかに、感興にまかせて深入りしすぎたようです。しかし、これも、研究に対するわたしの素朴な精神昂揚によることで、それについては、みずから少々慰める点もありますが、実際問題のほうは、二進も三進もゆかないところへきているんです」
「石亭先生、あなた、まさか、承諾したんじゃないでしょうね」
先生は、叱られた子供のように身体を縮めて、
「……じつは、……承諾したんです」
「これは、驚きました」
先生は、しょんぼりと顔を上げて、羊のような優しい眼でこちらを見上げながら、
「わたしとしては、どうにも、止むにやまれん次第だったんです。……この辺の機微は、くわしくお話しなければご諒解を得ることができまいと思いますが、かいつまんで申しますと、だいたい、こんな具合だったんです。……今日の昼、階下の土壇で飯を食っていますと、ゴイゴロフという肺病やみの露西亜人が、わたしのそばへやって来て、オイ、二階の先生、景気はいいか、というから、いや、どうもこのごろはシケでとんと上ったりだ、と答えますと、ゴイゴロフは、そいつは気の毒だ。