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いぬがなくとガラスがこわれるか

犬がなくとガラスがこわれるか

中谷 宇吉郎

「暮しの手帖 昭和36年第3号」暮しの手帖社、1961(昭和36)年7月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,337 字 · 41 页

青空文庫

これは取りやめてよかったので、その後十五分か二十分したら、はげしい雷雨が襲ってきて、雷鳴がとどろきわたるという悪天候になった。

この点が非常におもしろいところであって、人間ロケットは飛ばし得ても、数時間後のお天気の予報はできなかったのである。けっきょくまた初めからやりなおしで、燃料を入れかえ、機械の調整をし直して、天候の回復をまって、第二回目の発射に成功したわけである。

第二回目は成功したのであるから、それでよいじゃないか、といわれる方もあろう。しかしこのやりなおしというのは、たいへんな仕事である。燃料の一部に液体酸素を使うのであるが、これは俗に液体空気といわれるもので、沸点は零下百八十三度である。それで機体はすっかり冷えてしまうので、出したあとには、霜がいっぱいつく。それを暖めてすっかり乾かして、また入れなおすのであるから、たいへんな仕事である。また時間もかかる。いったん中止したら、二度目までに、二日間もかかったが、それくらいはかかるであろう。第一回目の準備に、何千人という人間が、数日間ほとんど不眠不休で働いたあとであるから、なおさらのことである。