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いぬとにんぎょう
犬と人形
海若 藍平
「九州日報」1923(大正12)年10月30日~11月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,527 字 · 3 页
もうしかたがないから二人ともおとなしく遊ぶのですよ。そうしたら今に又いい犬といいお人形を買って上げるから」
と言われました。
二人は悲しくなってシクシク泣き出しましたが、やがて花子さんはばあやのお庭の隅に、「メリーさんのお墓」と書いた木の札を立ててコスモスやケイトーの花を上げて拝みました。太郎さんは、
「ポチが生きていればメリーチャンもきっと焼けないでいるよ。まだよくわからないのだからお墓を建てるのおよしよ」
と止めましたが、花子さんはただシクシク泣いて拝んでいました。
火事がすっかり済んでから、お父様は一人でお家の焼けあとを見にいらっしゃいましたが、夕方になると急いで帰って来て、
「うちはたった一軒焼け残っていた。さあみんな来い」
と大喜びで、ばあやも連れて東京のおうちへお帰りになりました。
おうちに来ると花子さんは何より先に押入れをあけて人形を見つけますと、抱き締めて飛んでよろこびました。それと一緒に太郎さんはおうちのまわりをクルクルまわって、
「ポチよ、ポチよ」
と呼んでいましたが見つかりませんので、ベソをかいて帰って来ました。そうして今度はお庭の隅にポチのお墓をこしらえ始めました。