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いちろうじん

犬田卯短編集二

犬田 卯

犬田卯『犬田卯短編集二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:一老人、おびとき、錦紗、競馬、荒蕪地、沼畔小話集。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,383 字 · 103 页

青空文庫

」

「でも、嫁さんは……昨日もいたようだが……」

「なんでも留守させて、その間に、二人でみんな運び出したって話だね。夜中に、この坂の下へトラック来たの見た人があるちけから……」

浩さんの前半生が分った。どこへ約束しても彼は金をつかんでしまうと仕事に行かず、ちびりちびり飲んでしまうので、もはやそれを知るところでは雇い手がなかったのであった。幼い時から村を出て樺太から九州の端までほっつき歩いた「風来坊」――村人の表現――で彼はあったのだ。

「知らない土地へ行ったらあれでも夫婦で通ッぺね。」真面目な顔で話し手はいうのであった。それから村の酒屋ではいくら、どこそこではいくら引っかけられたという話の末に、お宅でもですぺね、と訊くから、少しばかりやられた……しかし問題なのは残されたこの仕事だ、すっかり信用してしまってあてにしていたものだから、というと、

「いや、全くそれは降参(浩さん)しやしたね」といってその農夫は、不精髭に蔽われた熊のような顔でにやり笑ったのであった。