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いちろうじん
犬田卯短編集二
犬田 卯
犬田卯『犬田卯短編集二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:一老人、おびとき、錦紗、競馬、荒蕪地、沼畔小話集。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,383 字 · 103 页
しかしながらそれでも結局は例の運符天符……そこに落ちつくのが百姓の常道で、まず曲りなりにでも月日が過ごせれば、それで文句は言えなかった。
家のことを心配して、時々小為替券の入った封書などをよこすのは、かえって百姓に経験の浅い忰の正吾の方だった。……あの借は払ったかとか、どれくらい米がとれたかとか、たといどんなに手ッ張ったにせよ、俺のかえるまで、作り田は決して減らすなとか、あの畑へは何と何を播けとか、そんなことまで細かに、よく忘れないでいたと思われるほどあれこれと書いてくるのだ。黙っていると何回でも、返事をきくまでは繰返して書いてくるので、儀作の方で参ってしまい、前後の考えもなく、洗いざらい、そのやりくり算段を報告した。
ところでそこに問題が孕んでいたのだった。それと言うのは、事変二年目の決算についてだが、忰の思うとおりにはどうしても行きかねたのである。しかもそのことを正直に書いてしまったものだから、早速、忰から「なんでソノ古谷さんの方だけ出来なかったのか、やろうと思えばやれたのではなかったか。それに俺としては、そんな大口のやつがあるとは実は知らなかった……」