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こぶ

犬田卯短編集 一

犬田 卯

犬田卯『犬田卯短編集 一』。同一底本的分册已合并为一书。收入:瘤、米、橋の上。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 48,259 字 · 96 页

青空文庫

これで俺ら、人に後指さされるようなこと、まあだした覚えはねえんだと。このでれ助親父。」

おせきは遠くの田圃にいる人々が首をもたげたほどの声で、家付娘の特権を振りまわした。

「ばか阿女、いくらでも哮えろ」と浩平は気圧され気味で、にっと笑った。「山の神なんか黙って引っ込んでいればいいんだ。何のかんのと差出がましいこと言うのを、俺の方の村では雌鶏めとき吹くって笑うんだ。雌鶏とき吹くとその家に災難があるって、昔からこの辺でも言ってべ。」

「何だと、きいた風なこと吐かしやがって、汝ら、はア、俺家のおっ母とでもいっしょになれ……今日限り、縁を切っから、はア……」

おせきは地団太を踏んで、歯をぎりぎりとかみ、熱い涙をはらはらと飛ばした。

「おっ母さん、はア、勘忍して……おっ母さん、よう勘忍して……」とおさよが、泥手のまま夫に武者ぶり付こうとする母のあとから、いきなり縋りついた。

六

次の日、長男の勇が東京の工場からひょっこり帰って来て、おせきの気持はどうやら転換した。田圃には自分たち同様、田植の人々がそこにもここにも見えたので、彼女はおさよにすがりつかれるまでもなく、じっとそこで我慢したのであったが、あくまで白をきっている夫の態度には、ますます腹が立ってならなかった。