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はんにん

犯人

坂口 安吾

「群像 第八巻第一号」1953(昭和28)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,695 字 · 26 页

青空文庫

なぜ泥棒にきたかと訊いたから、泥棒しないと御飯が食べられないからだとワケを話した。するとサヨはポロポロ泣いて、すまなかった、すまなかった、と言ってオレを抱いた。その日からサヨはオレに親切だった。食べるものがないときはいつでも来いと云った」

「それはいつごろか」

「サヨの死ぬ一月ぐらい前だった」

「お前は時々食べ物をもらいにサヨのところへ行ったのか」

「時々行った。サヨはオレが行くとよろこんで、あれもこれもタラフク食えとすすめた」

「サヨが死んだ日のことを云ってごらん」

「サヨはオレの顔を見ると、お前の来るのを待っていたと云った。そしてこの前見せてくれたハートのクインのお守りをオレに貸して抱かせてくれと云った。それを手渡してやるとサヨは自分の肌につけてポロポロ泣いて、お前に殺してもらうために刃物を用意しておいたと白木のサヤの短刀をとりだして見せた。どうして死にたくなったのかと訊いたら、お前に会ったからだと云った。そしてお前に殺してもらえれば本望だと云ってポロポロ泣いた」

「なぜ本望だか、お前に分るか」

「そんなことは分らないが、サヨの言葉はみんな本当にきまっている」