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きょうかしあかちょこべえ

狂歌師赤猪口兵衛

夢野 久作

博多名物非人探偵

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,418 字 · 79 页

青空文庫

すこし落着きかけた婆さんの歯抜けが又もガタガタ言い出した。それに連れて和尚の顔色がバッタリと暗くなった。

よしんば、それが狸狐の悪戯にもせよ、人間の死骸とあれば知らぬふりをしておる訳には行かない。さればとて見るのは怖いし、万一真実の屍体であれば係り合いになるかも知れぬと言う当惑からであった。

しかし、それでもヤット決心をしたらしく、和尚は脱けかけた腰を引っ立てて、婆さんに手を引かれ引かれ、真暗い木立に囲まれた裏手の墓地に来た。一際広い真白な石甃を囲らした立派な墓所の中央に立っている巨大な石塔の前まで来ると、ソオ――ッと頸を伸ばしているうちに和尚は年甲斐もなく腰を脱かした。

「ワワワ……ク……蔵元屋の……お……お……お熊さんが……ワワワワ……これは……」

と尻餅を突いたまま悲鳴を揚げた。

「ドド……胴と……足が……ベベベ別々に……ワワワワァ――ッ……」

時は徳川十一代将軍家斉公の享和二年三月十一日、桃のお節句以来、晴れ続いた朝のことであった。

黒田五十五万石の城下、博多の町の南の外れ。瓦焼場の煙渦巻く瓦町を抜けて太宰府へ通う田圃の中の一本道の東側。欝蒼とした欅、榎、杉、松の巨木に囲まれた万延寺裏手の墓地外れに一際目立つ「蔵元家先祖代々之墓」