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どくしん
独身
「スバル」1910(明治43)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,012 字 · 19 页
「饂飩がまだあるなら、一杯熱くして寧国寺さんに上げないか。お寒いだろうから。」
戸川は自分の手を翳していた火鉢を、寧国寺さんの前へ押し遣った。
寧国寺さんはほとんど無間断に微笑を湛えている、痩せた顔を主人の方に向けて、こんな話をし出した。
「実は今朝托鉢に出ますと、竪町の小さい古本屋に、大智度論の立派な本が一山積み畳ねてあるのが、目に留まったのですな。どうもこんな本が端本になっているのは不思議だと思いながら、こちらの方へ歩いて参って、錦町の通を旦過橋の方へ行く途中で、また古本屋の店を見ると、同じ大智度論が一山ここにも積み畳ねてある。その外法苑珠林だの何だのと、色々あるのです。大智度論も二軒のを合せると全部になりそうなのですな。」
主人は口を挟んだ。「それじゃあわざと端本にして分けて売ったのでしょう。」
「お察しの通りです。どこから出たということも大概分かっています。どうかすると調べたくなる事もある本ではあるし、端本にして置けば、反古にしてしまわれるのは極まっていますから、いかにも惜しゅうございますので、東禅寺の和尚に話して買うて置いて貰うことにして来ました。