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どくしん

独身

森 鴎外

「スバル」1910(明治43)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,012 字 · 19 页

青空文庫

四

今は東京で立派にしているのだが、なんにしろ教育の無い女の事だから、宮沢は何かに附けて困っているよ。」

富田は意地きたなげに、酒をちびちび飲みながら冷かした。「もうおしまいか。竜頭蛇尾だね。そんな話なら、誉めなけりゃあ好かった。」

四

この時戸口で、足踏をして足駄の歯に附いた雪を落すような音がする。主人の飼っている Jean という大犬が吠えそうにして廃して、鼻をくんくんと鳴らす。竹が障子を開けて何か言う声がする。

間もなく香染の衣を着た坊さんが、鬚の二分程延びた顔をして這入って来た。皆の顔を見て会釈して、「遅くなりまして甚だ」と云いながら、畳んだ坐具を右の脇に置いて、戸川と富田との間の処に据わった。

寧国寺さんという曹洞宗の坊さんなのである。金田町の鉄道線路に近い処に、長い間廃寺のようになっていた寧国寺という寺がある。檀家であった元小倉藩の士族が大方豊津へ遷ってしまったので、廃寺のようになったのであった。辻堂を大きくしたようなこの寺の本堂の壁に、新聞反古を張って、この坊さんが近頃住まっているのである。

主人は嬉しそうな顔をして、下女を呼んで言い附けた。