轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ねことしょうぞうとふたりのおんな

猫と庄造と二人のおんな

谷崎 潤一郎

「改造 新年号 第十八巻第一号」1936(昭和11)年1月1日<br>「改造 七月特大号 第十八巻第七号」1936(昭和11)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,020 字 · 131 页

青空文庫

「早いとこ頼みまっさ。」

と、奥から出て来た親方に云った。

「何処ぞ行きはりまんのんか。」

「有馬へ紅葉見に行きまんね。」

「そら宜しおまんなあ、奥さんも一緒だっか?」

「そうだんね。―――早お昼たべて出かけるさかい、三十分で頭刈って来なはれ云われてまんね。」

が、それから三十分過ぎた時分、

「お楽しみだんなあ、ゆっくり行って来なはれ。」

と、背中から親方が浴びせる言葉を聞き流して、家の前まで戻って来て、何心なく店へ一と足踏み込むと、そのまま土間に立ちすくんでしまった。

「なあ、お母さん、何で今日までそれ隠してはりましてん。………」

と、突然そう云うただならぬ声が奥から聞えて来たからである。

「………何でそんなことがあったら、わてに云うとくなはれしまへん。………そしたらお母さん、わての味方してるみたいに見せかけといて、いつもそんなことさせてはったんと違いまっか。………」

福子が大分お冠を曲げているらしいことは甲高い物の云い方で分る。母親の方は明かに遣り込められている様子で、たまに一と言二た言ぐらい口返答をするけれども、胡麻化すようにコソコソと云うので、よく聞えない。福子の怒鳴る声ばかりが筒抜けに響いて来るのである。