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ねこりょうり

猫料理

村松 梢風

「あまカラ 10月号 第八十六号」甘辛社、1958(昭和33)年10月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,034 字 · 4 页

青空文庫

横浜から有名な獣医さんが十日目ごとに全員の健康診断に来る。モナコの王様くらいの生活振りだ。全く主婦連合会の奥さんたちに聞かせたら目を廻して、おこって私のところへ決議文でも持って押し掛けるだろう。その代り私の家の猫を見て「どういう猫ですか」と驚かない人はない。飼い方がいいだけだ。美男美女揃いの上に、目方も大きいのは二貫目以上あって、赤ン坊の二倍、小さい犬ぐらいある。「小ミケ」という名のオスの三毛などは二貫目あって、その美貌と気品はいかなる名優も貴公子も及ばない。

こういうわけで、私の家ではあらゆる魚は猫の食物である。しかも有名な小坪の漁場でとれたものばかりだから、東京の天ぷら屋のタネなど生臭くて私には食べられない。日本料理店へ行くと、はなから終いまで魚ばかりという家がある。それがみんな生臭いか水っぽいかだ。私は腹を立ててどなってしまったことがあるが、おこるのは私のほうが悪いのだから、よくよくでなければ行かないことにしている。日本人はよくよくの猫族である。しかもその味覚は私の家の猫にはとうてい及ばない。

(むらまつ しょうふう、三三・一〇)