轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

さるがしま

猿ヶ島

太宰 治

「文學界」1935(昭和10)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,768 字 · 12 页

青空文庫

それでは、いまは夜明けなのか。

私は、いくぶんすがすがしい気持になって、山をよじ登ったのである。見た眼には、けわしそうでもあるが、こうして登ってみると、きちんきちんと足だまりができていて、さほど難渋でない。とうとう滝口にまで這いのぼった。

ここには朝日がまっすぐに当り、なごやかな風さえ頬に感ぜられるのだ。私は樫に似た木の傍へ行って、腰をおろした。これは、ほんとうに樫であろうか、それとも楢か樅であろうか。私は梢までずっと見あげたのである。枯れた細い枝が五六本、空にむかい、手ぢかなところにある枝は、たいていぶざまにへし折られていた。のぼってみようか。

ふぶきのこえ

われをよぶ

風の音であろう。私はするするのぼり始めた。

とらわれの

われをよぶ

気疲れがひどいと、さまざまな歌声がきこえるものだ。私は梢にまで達した。梢の枯枝を二三度ばさばさゆすぶってみた。

いのちともしき

われをよぶ

足だまりにしていた枯枝がぽきっと折れた。不覚にも私は、ずるずる幹づたいに滑り落ちた。

「折ったな。」

その声を、つい頭の上で、はっきり聞いた。私は幹にすがって立ちあがり、うつろな眼で声のありかを捜したのである。