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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

01 一九三四年(昭和九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,990 字 · 30 页

青空文庫

十二月八日 〔牛込区富久町一一二市ヶ谷刑務所の宮本顕治宛 淀橋区上落合二ノ七四〇より(封書)〕

第一信。 (不許)[自注1]

これは何と不思議な心持でしょう。ずっと前から手紙をかくときのことをいろいろ考えていたのに、いざ書くとなると、大変心が先に一杯になって、字を書くのが窮屈のような感じです。

先ず、心からの挨拶を、改めて、ゆっくりと。――

三日におめにかかれた時、自分で丈夫だと云っていらしったけれども、本当は余り信用出来なかったのです。叔父上[自注2]が、顔から脚から押して見てむくんでいないと仰云ったので、それでは本当かと、却ってびっくりしたほどです。それにしても体がしっかりしていらっしゃるのは何よりです。私とは勿論くらべものにはならないけれども、私は一月から六月中旬までの間に相当妙な調子になって、やっとこの頃普通にかえりましたから信用しなかったのも全く根拠のないことではないわけです。

叔父上は十二月六日に林町[自注3]にお出でになり父[自注4]にも会われ、いろいろのお話を伺いました。さしいれのこと、弁護士のこと、毛糸であんだ足袋のこと、いろいろ承知いたしました。