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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

02 一九三五年(昭和十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,805 字 · 40 页

青空文庫

――

一月の二十三日に行ったとき、売店から梅の鉢を入れるよう頼んだのですが、どんな梅がはいりましたろう。この家の庭に山茶花はあるが梅はありません。門を入ったところには、それでも赤松が一本あるの。私は、ホラ先動坂の家へ咲枝[自注3]が持って来てたべた虎やの赤い色のお菓子、ああいう系統の色の紅梅がすきです。ほんとにどんな梅が入ったかしら。白いにしろ紅いにしろともかく梅が入ったかしら。――どうも漠然たるものですね。

運動の時間、あなたはどんなことをしていらっしゃいますか。心臓の抵抗力を弱めないよう、例えば朝体操をする時など柱でも壁でも爪先で体を突っぱってうんと押して力を出す事もよいらしゅうございます。私の心臓がひどくなったのも運動不足による衰弱です。どうかお気をつけになって下さい。それからお風呂の時桶や湯槽の縁をよく注意して、眼へバイキンなど入れぬよう、呉々お願いいたします。私の心配と云うのも謂わばそのようなことが主なのですから。――

今夜本当は帝劇へベルクナーという女優が主演している女の心という映画を見に行こうかと思っていたのでしたが、家の中をコトコト動いていたので駄目。