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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
けれども、これで又仕事したくなると、例のお笑いになるおったて腰で、旋風的になって来るのです。
きょうはこれから姉と妹とで、ちょいとした罪悪を犯します、寿が自分用というひとかたならぬ砂糖をもち出して、コトコト煮るものをやって、私にふるまってくれるのですって。御免なさいね。二人遊びの日だから、わたしだけ袂でかくして、あなたに知らせ申さないということが出来ないの。おまけに、私の着ているセルは、筒袖でしかもゴムでくくれて、ニュッと腕が出ているのですもの。
そんなことをしているうちに夕方になり、夕飯をしてやって寿の里帰り(やぶ入り日)も終りとなるわけです。
私は、小使帳の整理や日記やあるのよ。二階のテスリに干しておいたネマキが風で落ちているのを見つけましたし。
きょうはすっかり夏になりました、室内で七十八度あります、あしたあたり又グッと冷えるのでしょうか。
大観音よこの交番のところを入って動坂の通りへ出たら、あの途中の右手の養源寺に都指定史蹟として、西村茂樹之墓と札が立って居りました。よく通った頃はそんなに、いつもおじいさんの前を通るような気のする札はございませんでしたね。