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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
こういうおどろくべき単純さと複雑さとの調和が、可能なのが、何かの意味で日本的だというのならば、日本の世界的な水準というものも納得されるようです。
すこしきりつめた云いかたをすれば、現在のように今夜の自分の生命について信じず、ましてや数ヵ月後の其について信じず、しかも人間の未来の輝やかしさについて益※(二の字点、1-2-22)深く信じるこころをもって、こうやって書いていると、いのちへの愛が凝集して叫びたくなるようね。
こういう感動の鮮やかな深さは、もしかしたら、今度は神経の負担が少いからかもしれません。珍しく国が居ります、そして珍しく本気で協力して居ります。わたしはうれしいの。わたしが余りよろこぶものだから国もうれしいところがあるらしくて、さきほど事務所へ出かけるとき「じゃ、なるたけ早くかえりますから。我慢していてね」と云って出て行きました。こんな言葉は、やさしい言葉よ。ね、だのに、この人ったら、浴衣の汗の口なんですもの、風向き一転するや、忽ち端倪すべからざる変化を示します。
わたしのような人間には、信じないで信じている、というような芸当はむずかしいのに。