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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
わたしが小走りに七輪へかけつけ、唖然として且つあわてる様子御想像下さい。鰊は北の白熊に獲られるのね、きっと。やきもちやいて、東京へ出たら逆をやれと思って、自爆して、わたしという白熊を釣って駈け出させたのは手際とや申すべき。
もう一話があります。なかなか多事だったのがお分りでしょう。「鑵今昔物語」というものです。砂糖の配給は、この頃〇・六斤が〇・五斤(一人)となって、月の中旬以後になりました。もと重治さんが「砂糖の話」という小説をかきました。さとうの話は、充満しているわけですが、うちの砂糖ののこりが、大事にカンにしまってありました。間違えてそのカンをあけたら(つまり間違えるぐらい、タマにしかあけないというわけ)これも亦どうでしょう。カンの中が蟻だらけなの。へえと思って、それをおはしでかきまわして、先ず蟻陣を混乱させ、カンだから小鉢に水を入れた真中に立てて、行くたんびに、カンカンとたたいて蟻を追い出していたつもりのところ、さっき落付いて中をよくのぞいたら変なことになって居ります、水があるのよ、わたしの入れたのはさとうなのに、うすよごれた水がカンの中にあるのよ。