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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
いくら丸くても、半分でカマドの世話をし、半分で畑の草とりは出来かねます。夕飯頃日がかげって丁度水をやり、手をこしらえてやったり、草むしりによい時刻一人は、一人で七輪の前で大汗です。鷺の宮なんかの風景は、ね、細君が台所にいるのよ。あなた、あの胡瓜一寸とって来て下さいよ、うんよし。或は、一寸旦那さん見えないナと思うと、草むしり。こうして畑は繁昌です。
緑郎の暮しも目下は食糧が大問題でしょう。包囲の頃(普仏戦争)ゴンクールの日記に、やっぱり妙な貝を歩道で売っている、などと書いてありますが、その比でないようね。その時分は、牧場の牛や羊や畑を、空から見下してはブチこわして飛びまわる罪な化物は居りませんでしたからね。今それやっているそうです。大いに参考とすべき事実です。近郊というものの立場について、ね。袋の中のようなものになって大したことです。二人だからいいところもあり、又反対に、緑郎とすれば、いろいろの場合、妻の処置について心がなやむでしょう。
ゴンクールの日記をよんだシチュエーションも面白うございました。わたしが風呂たきをしていたの、ひとりで。たきつけに古雑誌をすこし使います。