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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

そして遂にそのものを天才に仕上げてしまうのよ。賞揚によってというよりも寧ろ抵抗を養わせて。寿まだ参りません。今夜早くねるのがたのしみです。はれぼったいのですもの、夏の真昼の公園のイメージのときはぱっちりでしたが又ねむたいわ。ではね。お大事に、呉々も。

八月一日夜 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

八月一日、

さあ、これで一先ず落付きました。ゆっくり、あれこれのことをお話しいたさなければなりません。

今夕方の六時で、わたしは第一次夕飯を終りました。というと、第二次第三次とありそうで、支那の長夜の宴めいてきこえますが、実際はね、一度分に御飯が足りなくしかのこっていなくて、迚もこれでは駄目なのよ、しかし、ひるはパフパフですましたから、チャンともう一度たべる必要あり、午後からよく働いておちおち手紙かけない位ペコでしたから、豆入り飯にトロロコブのつゆをたべたところ。こんな話しぶりで、もうおわかりでしょう、うちには私一人だということが。そして、欣然として二人遊びにとりかかったということが。

二十五日の午前十一時何分かの汽車で、咲国二人旋風の如く出立。