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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
憐憫と、うれしい愛くるしさとは別のものですもの。
ことしは、大分わたしの意気込みがあって、大晦日には二階はちゃんと煤もはき、よく拭き、御秘蔵の黒釉の朝鮮壺には独特の流儀に松竹梅をさしました。そして壁にはこれも御秘蔵のドガのデッサンの複製をかけました。赤っぽいものは机の上の飾皿だけです。なかなかさっぱりときれいです。花はこれを書いている左隅の障子際においている白木の四角い書類入箱の上にのって居ます。今坐って居りますが、七日ごろになったら久しぶりで机の高い方を出して腰かけにします。
元旦から今年の計画に着手して、なるたけわたしは自分の部屋暮しを実行いたします。日記もつけ出しました。こんな暮しの中では一日にどんな勉強したか、何をしたか、一日ずつちゃんと見てゆくのも大事です。今年本やに日記というものがありません。日本出版会は日記の統制もやって、従来の日記はつくらないのだそうです。わたしは十六年の日記を出して、つけます。曜日が三日ずっているのよ。これを当にして、とんちんかんをやって、叱られやしないかと実は苦笑している次第です。
何がどうあろうと私は何となしに元気を感じ、新しい暮しかた、勉強を期待して、きちんとした気分の正月です。