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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
林町へは国が一寸帰っても落付けず、ソワソワしているのも尤だと思います、こっちをみると。わたしは、当然こっちにいて国のように落付けず、たかだか休養の安らかさを感じ、こっちに落付くことには本然の抵抗があって不可能ですが、成城をきめておいて何とよかったでしょうと思います。
月曜日にここから帰り、あれこれ用をすまして、成城へ行きます。ここへ来るのはわたしにとって、いつも何か意味のある時であるのも面白うございます。自然描写たっぷりよりも、こんな手紙になるのだから、今の時勢ね。又、来てからまだ門の外へ出ないのですもの、裏山の方やおけさ婆さんの方の景色のお話ししようもないのだけれど。
おみやげに草履がありそうよ。但、ありそうというところに御留意を。夕方、咲が自転車で町の入口のその店まで行ってくれますって。あればうれしいことね。さし当って何よりのおみやげね、わたしの休めたことの次には。
きょう位工合よくここの空気がきけば、明日明後日とよほど休めるでしょう。そして、その下地をなくさないうちに、成城ですこし丈夫さをためこもうと思います。かえる迄にはもう一度かくでしょう。