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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
をかいたアヴェ・プレボウ、「ポオルとヴェルジイニ」のサン・ピエール、シャトウブリアン。等、大革命前後、アンチクロペディスト、ルソー等の影響が歪曲されて現れたロマンティスト達のことをかいて居ります。アナトールという人は野暮ぎらいで、そのために突こみの足りないものをかくことになったのではなかったでしょうか。フランス流の明察はありますが。野暮をおそれぬ大風流もあり得るのにね。アナトールと云えば緑郎は伯林へ行きました。エトワール、コンコード、よく散歩したリュクサンブルグ公園、オペラやマデレーヌ寺院のある大ヴルヴァールが、激戦の巷となって居る由です、わたしのいたホテルから近いモンパルナッスも。ロダンの家のあったムードンの森というのはね、ヴェルサイユ門の外のクラマールという町の外で、いい面白い森でした。そこも大激戦の由。あのポート・ド・ヴェルサイユをはさんで砲火が漲っていると思うと感慨深うございます。郊外は廃墟の由、わたしのいたクラマールのちょいとした家はどうなったでしょうね、緑郎夫妻はいずれはシベリア経由で戻るのでしょうが、それは果していつのことでしょう、さし当ってはどこか山の奥へでもゆくのでしょう。