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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

面白いものね。

読んで、国男さんがフラフラしている間に、乞食の洗濯をいたしました、すごいでしょう。わたしはこの夏、お下りのテニスシャツ一つにスカート一つですごしてしまったのよ。従って寝る前に洗って朝干いたのをきるという乞食の洗濯でやって来たところ、この間うち雨がふった上に、きのうは急に運送やが来て成城へ行くというものだから、大バタバタで荷作りさわぎいたしました。前晩は咲のを十キロずつ七ヶも作ったのよ、国と二人で。ですから、あわれいとしきテニスシャツも黒くなってしまって、きょうはあたりまえのキモノ着て居ります、働く人に何と不便でしょう。靴というものがないから外出はこまるけれども、働いて、それ八百やだ、それ何だと、ことしは冬になっても工夫してこの西洋乞食でやるつもりです。ずっと楽で疲れませんもの。尻尾のきれた丸い牝鶏姿は十年昔でお廃しと思っていたら、又々そうなってしまったと苦笑いたします。動坂の家へ、小さい風呂敷へつつんで、浅青のスウェターもって行って、チョコンと着て、浅緑の毬のようになっていたのを思い出します。あの緑の色は大変きれいだと思って着ていたのよ、尤もすこしよごれては居りましたが。