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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
官能において簡明な美が、つまりはそういう精神に立っているように。
わたしはこの頃こんなことを屡※(二の字点、1-2-22)感じます。少年から青年に亙る時期にいろいろの体技、スポーツを身につけるということは、大したものであると。進退についての、おのずからな自信、それによる自由さいかばかりでしょう。精神や性格に加わる一つの現実の可能です。性格とそういうスポーツは結びついたところがあると云うことも出来るけれど。運動神経の敏さと明敏とは切りはなせないものですから。
太郎がスキーをはじめました。其には自転車をのりまわしていてスピードに恐怖しないこと、バランスの馴れ、などで上達著しい由です。瞬間の処置に動じない男らしさは、一つの美です、私などにとって大きい美しさです。太郎がどんな性格と人間的規模をもつ男になるか、そのような身についた力が、人間生活の仕合わせ、よろこびを与えるものと迄なるかどうかしらないけれど、でも条件だけは与えてやりたいと思います、わたしの気持お分りになるでしょう? 年月を経ても抜けないものね、その鍛練された線ののびやかさは。子供のときやった泳ぎ、自転車は決してぬけないそうです。