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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

には、一家をあげて驚歎いたしました。「マア、先生、おえらいこと※(感嘆符二つ、1-8-75)」凄いでしょう? 女医でなくて先生になっちゃったのよ昨今。ほかによびようがないのですって。致し方もなし。これというのも、この節は夜具屋が縫わなくなって、うちで人に手伝ってもらって夜具の綿入れをいたしましたから、それで、おそろしながら「綿入れ」と称するものが出来上ったのよ、あれこそブランカ特製品ですものね、アタタカナラザルヲエンヤ。

十一月十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

十一月七日、これは、秋晴れの空からひらりと散って来た一枚のもみじの葉のような手紙。

さて、只今午後三時半。五日以来日に一度の行事も、本日分は終ったというわけでしょうか。さっき、もう一寸で出かけるところで、おべん当もこしらえて、まさに着物を着かえようとしていたら始りました。そのおべん当を今たべて一服というところです。

何年も、「一服」の手紙をかいて参りましたが昨今の「一服」は極めて時代的です。一日のときは、みんないましたが、壕の準備がしてなかったので大いにせわしない思いをいたしました。