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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
国の性質は物臭さの屁理屈で all or nothing と、イプセン流なの。ですから、いろいろ放ぽりぱなしで「姉さん、いざとなったら同じことだよ」と、この間うち土蔵から出した陶器類ね、ズラリと並べたまま自分は開成山なの。いい度胸です。ですから、わたしは女心の小心でね、昨夜は日本でも珍重すべき参考品をあまり芸術家として心ないと惜しくて大事につつんで、ガラスの棚から大きい古米櫃にうつし、蚊帳でくるみました。気休めね、埋めなくちゃ何もならないのよね、本当は。いざとなって同じというのもいいが、ものはすべて一挙に行きませんから、家じゅうのガラスがみんなこわれて雨が入り、室じゅうガラスの破片だらけで、腰かけるところもないようになって、しかもまだ家だけのこる場合だってあるのですもの。わたしはガラスの生えた席というものに大した嗜好をもたない以上、自分の安眠のためにもね、働かざるを得ません。
こうしてポツリポツリと働いて怪我の要素を減じてゆくというわけでしょう。でも昨夜はわたしもなかなかよ。午後になってから、思いたって、この間にとお風呂をわかしました。疲れたし働いてよごれたしかたがた。