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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

十三年の頃にはわが身一つに霜のきびしきという感じがあるのね、霜がおりはじめると、高い木の、その木の更に上の梢から色づきはじめるものなりという自然観察に立った会得が乏しい感受のしかたでした。一葉の紅葉に秋がわかるという大きいうけかたではないようなところがあって。其というのが、あの時分は、丁度、やっとレールにのって、汽車が動き出して、まだ幾丁場も進行していず、せめてあすこ迄はと行きたいところがあったから、その痛切さがああ映っても居りましょう。何だあの汽車は六七年前に車輪をとりかえて元のがつかえるのに新式改良だなんかと熱中して、みなさい、走らないじゃないか、格納庫にいるきりじゃないか[自注16]というのはくやしかったし、更に更に何、あの汽車を扱って車輪の入れかえなんかさせた人間の腕がよくなかったのさなんかというのはどうにも我慢がなりませんでしたからね。いろいろの時代のいろいろのこと面白いことね。

十九日のお手紙、羽織今日着いた以下数行何となし汗ばむような気もちで拝見しました。わたし今風邪気味ですから、どうかあまり汗ばませないでね。くしゃみになって風邪がこうじます。