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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
明日ドラ声女房で現れないためにね。二人あそび終り。
[自注8]アホートヌイ・リャード――百合子がソヴェト同盟滞在中に知った場所。
[自注9]西からかえったら――百合子が西ヨーロッパからソヴェト同盟へもどったこと。
四月三十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
四月三十日
きょうは、又、のんびり二人遊びで暮そうと金曜日から楽しみにして、先ずその前祝いとして昨夜は九時に床につきました。全くぐっすり五時間ほど眠って一寸目がさめ、ぐっすり五時間眠ると一通りは眠ったことになるらしいのね。暫くパチクリして、ああ何と伸々していいのだろうと、床の中でうれしくのびたりちぢんだりして、雨戸すこし明け、朝の空気入れて又眠りました、すると、中條サン、中條サンと裏の画伯の妻君の声で、おきて手すりから見下すと、満開の山吹のしげみを背景に「ボークー演習」と小さい声で怒鳴ってくれました。「あら! 今日になったの」「そうですって」そこで遑てて紺モンペはいてへんな布かぶって、かけ出しました。七時半から九時半まで。きのうだったのよ。きのうは国が居りましたから「たまに出た方がいいわ」