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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

12 一九四五年(昭和二十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页

青空文庫

成程と思ってね、わたしはいつ、どこでどんな人にどういう話をしたか全然覚えて居りません。しかしそうして覚えていて何かの鼓舞としている人があるということは感動的です。

「でも、その人は自分流に解釈しているのね」とわたしは補足しました。「勇気が即ち才能という風には云えないわ、わたしは多分どんなに苦しくてもその事をやらずにいられなくてついやって行く、そういう内からの力みたいな押えられない力がもしいうならば才能だと思う」と云ったのでしょう。だってね、そうでしょう、勇気とそういう願望とは別よ。願望があるからこそ勇気があるという結果にはなるだろうが「ああそう、そうおっしゃったの、わかるようだわ」「才能なんか本人がとやかく心配しなくていいのよ、あるものならば必ず在って何とか動き出すものだから。知らず知らずよ。その位のものでなければ謂わば育ちませんよ」つけ加えて「その方、誰かしらないけれども、個人的にでなく芸術の理解という点から云うと、お気の毒ね、才能は勇気なりと要約して覚えているのだけのところという点があるわけでしょう? だからね」「全くねえ」その娘さんがお母さんと暮していて、亡父の財産が、満州にあって、あっちで後見役をしている三十何歳かの叔父さんが、満州こそ安全と主張するため、新京へ帰ったのは残念至極です。