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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

12 一九四五年(昭和二十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页

青空文庫

速達はおくれたところへこちらへ廻送の分となったのでしょう。このお手紙は三日にかかれ、六日目について居ります。市内では半月以上かかりましたものね。この間多賀ちゃんから手紙が来てわたしが去年から多賀ちゃんに手紙書かない、と云って歎いて来て居りました、そうだったのかしら、と信じ難く、生活の遑しさを省みました。本当にひどかったのねえ。多賀ちゃんにもゆっくり書き、お母様もこれから御心配いただかないように書きましょう。殆ど毎日書いていたそちらへの手紙が、本年になっては、この間うちあんなにまばらになってしまったのですものね。それで十分がたがたぶりがわかるというものです。ああいう風なガタガタ暮しは、もうおしまいよ、うれしいと思います。今のうち潮が高くなって来ないうち、大急ぎで、手につらまって飛石づたいにそちらへ移ってしまえば、もうそれで落付きです。この頃のことだから、どこへ行ったにしろ其々今らしいことはつきものでしょうが、其にしてもね。内地はもう2/3ばかりわたしの背後の景色となって居ります。こういう場合になったとき、経済上の理由でわたしが動けなかったりしたら、余り情けないと思って、一豊の妻を心がけていて、ようございました。