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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
12 一九四五年(昭和二十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页
これから又違った困難も次々に来るでしょうが、わたしが真面目である限り其は正当に経験されて行くでしょうと思います。
五月中の手紙でテーマの積極性ということについてお話しいたしましたろうか? 多分したと思うけれども又くりかえし思うので又云うわ。くりかえしたら御免なさい。
文学におけるテーマの積極性ということは文学上の問題として久しい前に云われました。随分いろいろにこねたわけでした。わたしは五月頃、忽然として胸を叩いて感歎したのよ。「ああテーマの積極性ということはこういうことであるのだ」と。五月の詩「五月の楡のふかみどり」のうたに連関して。云わば、はじめて鼓動としてわが胸にうったのね。一作家のテムペラメントとして内在的傾向として其は理解はしていたのですが。わかるということの段階は何と幾とおりもあることでしょう。そこで又改めて感じたのですが、文学のテーマの積極性というようなことは、よほど生活経験がいることなのね。説明してやるに骨惜しみをしては迚も分らないことなのね。文学感情=生活感情として、よ。まだまだすぐ、うんそうだというところまで日本の作家の歴史経験はつまれていません。