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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

12 一九四五年(昭和二十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页

青空文庫

九月四日(一九四五年)

只今お母さんから速達が来ました。達治さんの安否について心配して居りましたところ、やはり最も悲しいことになったようです。形は行方不明ですが、生存は万※一にも期しがたい前後の事情です。お手紙の要点を申上げます。

七月十七日召集をうけ広島に入隊。八月二日に休暇が出て、四日に又戻り、「六日の朝八時原子爆弾にあいました。当地も日々空襲で汽車不通」十二日に友人が広島へゆき調べてくれましたが、原隊では本人当日軽傷なるも行方不明とのこと。いろいろ調べたが不明。四五日したら患者を集合させるからとのことで又十七日の調べで生死不明、行方不明ということになったままです。

ところが十六日に周防村の新谷という一等兵が来て、負傷後宮本と三日一つトラックにいた。傷は後頭に一寸位の破片による傷二ヶ所、顔に薄い火傷。出血は六日午後に止った。帰っているかと思って来たとのことです。十三日に帰宅命令で戻った由です。お母さんがその人の宅へ行き、いろいろ細かにおききになったそうです。達ちゃんは、手当をうけられないからと三日目にトラックへ乗ってどこかへ行ったというので、病院などもお調べになったが不明。