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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

12 一九四五年(昭和二十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页

青空文庫

どこかへ行こうとして(治療に)途中で容子が変ったのでしょうか、たった一人でゆく筈もなし、実に奇妙です。たった一人なら被服も滅茶滅茶で名も分らずでしょうが。原子爆弾の負傷はどんな微細なものでもそこから腐蝕して生命を奪うそうです。東大のツヅキ外科へ入って死んだ人は指の先のかすり傷でそれが全身に及ぶ由、強烈なレントゲン照射にあったと同様で細胞を破壊し、白血球の激減がおこり、輸血するとそこから腐蝕し、毛髪脱落するそうです。

今郵便局へゆき、切符買えたらすぐ行くと打電しました。同時にそちらへも御覧の通りに打ちました。そちらの切符がまだ見とおしも立たなかったのが不幸中の幸でした。明早朝買いにゆき、買えたら最も早い機会で立ちます。多分新潟まわりでしょう。

友ちゃんのこと、子供らのこと、お母様のお心のうち万々お察しいたすにあまりあります。健気にぐちも書いていらっしゃいませんが、どんなお気もちでしょう。申しあげようもありません。此の上は、隆治さんの無事に還る日が一日千秋です。(在外邦人はみんな帰すそうです。八十万内地に戻るそうです。)

ともかく行って出来るだけおなぐさめもし善後策を講じ、行方をさがしましょう。