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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

12 一九四五年(昭和二十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页

青空文庫

輝の方は勝より疳の高ぶったなかなかがむしゃらな子です。割合この辺の子供は粗暴ね、東北の子供たちと一寸又違います。おかあさんはおじちゃんをたよっておいでです。子供たちにとってこわい人がいるから、と。輝にはたしかにそうね。この子は、よく導かれ、程よい重しがつかないと自分の廻転を止めかねるような男らしく見えます。父ちゃんのビールや酒を、ちょいと目がはなれると、のんでしまうんだって。

前の河村さんのところでは、下の写真をやる方の息子が、千葉から解除になって戻り、もう一人は隆ちゃんと同じように濠北の由です。帰った人はいろいろおみやげをどっさりもって来て、あの夫婦は自足しているようです。達ちゃんのこと、あきらめにゃいけませんと二言目には云うと友ちゃんが述懐しています。その気持はよく分るわねえ。燈を明るくし、ラジオは天気予報まで云うようになったとき、あっちこっちで帰って来るとき、もう帰る希望のなくなった友ちゃんやお母さんのお気もちは想像にかたくありません。友ちゃんは臥ることもなくて暮して居りますが。

経済の面では、自動車を処分したり、又達ちゃんが出る前に部分品の整理をしたりしてちんまりしてゆけば輝が成人する迄はやって行けようというお話です。