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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
12 一九四五年(昭和二十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页
わたし達の出来ることはいつも乍ら些少です。基本をそうして何とかやれて行ければ大いに助かります。お母さんは「わたしのいるうちは何とかやっちゃいこうが先は長いから」とおっしゃいます。「それは全くそうですが、兄や弟が子供の二人ぐらいは何とかいたしますよ」「ほんにの、うちの兄弟は仕合せと思いやりが深いからどうにかなろうと云っちょるの」友ちゃんは自分の健康が十分でないことで消極になっているようです。「これ迄あんまりふがよかったからこんなことになったやしれん」と云っているそうです。余り、というほど仕合せを感じていたのなら、せめてもです。
卯女の父さん、てっちゃん、鷺の宮、開成山からお見舞をもって来ました。わたし達からは百円ともかくさしあげました。わたしが帰るときには、この前野原やこっちへお送りした分ぐらいおいておこうと思って居ります。必要はないと云ったって心もちのことですから。それにつけ、こういう不幸が、いくらかわたしの収入のひらけた時に起ったのは不幸中の幸と思われます。過渡的な状況ですしあれこれと妥協点が求められているし、或線で彼我一致の利害もあり複雑ですから、決して前のめりはいけないけれども、昨今の事情にふさわしい範囲で相当いそがしくなります。